開催にあたって
OUT IN JAPAN #008 仙台
2016年3月21日(月・祝) に,仙台にて撮影会を行います。
東北でのカミングアウトの難しさは,首都圏等の困難とはまた違ったものがあると思います。
OUT IN JAPAN と震災後5年の東北で,そのギャップとはどういうものだろうか?
やってみないとその実際のところはわからない。
やってみて,カミングアウトしようという気持ち,
OUT IN JAPAN を活用してみようという気持ち,
自分の間合いでカミングアウトするという気持ち,
カミングアウトしない・できないという気持ち,
そんなそれぞれのカミングアウトを考え持ち寄る,そんなフィールドを作ることができたらと思いました。
震災を経験して,切実に感じた性的マイノリティならではの困難。
社会と繋がらなければ自分を守れないこと,日常で仲間と繋がっていなければ助け合えないことに気づいた「被災地」の性的マイノリティ。
昨今のLGBTへの関心の高まりを促してきた,「都市圏」の性的マイノリティ。
カミングアウトに対するギャップはどんなものか?
それを繋ぐものは何なのか?
地域の様々な人たちとの,今後にわたる繋がりを作ってゆくための契機にもなる。
キーワードは,様々な「つながり」なのかなと思います。
ちょっと無謀にも見える仙台撮影会で,東北のみなさんとのつながりを,東北と他の地域のつながりを,深めてゆきたいです。
OUT IN JAPAN は,5年間で10,000人のカミングアウトを目指しています。
東北地方の人口は900万人で,全国の7%に当たります。
ということは,東北で700人撮影するということなのですが,
大事なのは,それが可能なだけの状況を作ることができるかどうか?
震災以来,東北で活動している性的マイノリティのグループは,50くらいまで増えました。
これがさらに増えて,それぞれ10人弱が加わると実現することになりますが,結構途方もないことに思えます。
それだけの人が自分のまわりの生活を支える社会資源とつながり,さらにそれぞれ相互につながりあう状況。
自分のまわりに感じるニーズを発信できる状況。
目標にしていいことなのかもしれないです。
OUT IN JAPAN東北プロジェクト実行委員会
委員長 小浜 耕治
3月企画を終えて
この度は,OUT IN JAPAN 東北プロジェクトの実現に向けて,多大なるサポートと応援のお言葉,そして当日の実施運営へのご協力をいただきまして,本当にありがとうございました。スタッフを代表して,心から御礼を申し上げます。
日本で暮らすLGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティが抱える大きな壁のひとつにカミングアウトの問題があります。差別や偏見がまだまだ残る日本社会では,当事者が声をあげることはとても難しく,結果,みなさんの隣で暮らしている当事者は「目に見えない」存在となっています。そして,「目に見えない」ことが原因となりセクシュアル・マイノリティの課題が具体性をもって社会に伝わりにくく,理解も進まないという「にわとりたまご」状態が続いています。
「OUT IN
JAPAN」は,そんな状況を改善していくための何かのきっかけになれればと,セクシュアル・マイノリティのポジティブな可視化をめざし,2015年4月にスタートしました。東京での撮影会を皮切りに,大阪,福岡,名古屋にて開催してきましたが,実は東北地域の方々から寄せられた「ぜひ,地元で撮影会を!」という声が一番多かったのです。東京を中心とした都市圏で急速に進みつつあるLGBTムーブメントの陰で,地方でのカミングアウトの難しさが語られるなか,個人的にも非常に驚きました。むしろ,保守的な地域コミュニティ性が強いと言われる東北エリアだからこその「大切な声」であると理解し,過去の撮影開催地以上に,弊NPOにとっても大きなチャンレジとして,責任とプレッシャーを感じざるを得ませんでした。
そのような中,東北エリアのLGBT関係団体の方々が特別に実行委員会を立ち上げてくださり,彼ら彼女らからの強力なサポートのもと,東日本大震災から5年という節目にて,撮影会に加えて「震災とLGBT」をテーマとしたトークイベントや展示会など,これまでのOUT IN
JAPANにはない企画を実現することができました。イベント当日は,3月11日にプリンセス・プリンセスのこけら落としライブでオープンした会場「仙台PIT」内に,本当に温かく前向きな空間が生まれ,スタッフを含めた参加者全員が幸せな時間を過ごすことができました。更に,関連イベントとして前日に開催された3つの企画は,「カミングアウトはあくまでも選択肢のひとつ。カミングアウトしたいと思った人が,カミングアウトしやすい社会をつくっていくために,いろいろなアプローチが大切」という我々のコンセプトとも共鳴するもので,加えて,いずれも東北らしい学びや発見に溢れていたもので,個人的にも一生忘れられないプロジェクトとなりました。改めて,みなさまの熱意と配慮に心から敬意と感謝の気持ちをお伝えできればと思います。
OUT IN
JAPANは2020年までに10,000人のポートレート撮影を目標に掲げています。また,この東北の地で撮影会に加えて新たに形を変えた企画を実施できることを期待しつつ,先日4月4日,5日に達成したプロジェクト最初の1,000人の写真展の開催も視野に入れて活動を継続したいと思っております。そして,2020年に胸をはって,世界中の多様な方々をお迎えできるような日本を目指して。みなさんも,ぜひ,ごいっしょに。
2016年5月10日
認定特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ
代表 松中 権